技術資料

ステンレス板金加工における曲げ加工の寸法精度への影響

ステンレス板金の曲げ加工では様々な要素が影響しあい、最終的に寸法精度が決まります。

ここでは代表的な5つの属性についてご紹介します。

【1.伸びしろ】
曲げ加工後の曲げ角にはR形状が形成され、その結果、材料に伸びが発生します。
曲げ加工前の展開長から曲げ加工後の仕上がり寸法A、Bを引いた値を「両伸び」といい、その両伸びの1/2の値を片伸びといいます。伸びしろは
●材料属性(板厚・材料定数など)
●金型属性(ダイV 幅・ダイ肩R・パンチ先端R)
●加工属性(ボトミング・コイニング)
に影響を受けます。
曲げ加工前 曲げ加工後
伸びしろ(両伸び)=A+B-展開長
片伸び=両伸び/2
【2.金型属性】
下記表のように、金型各部の仕様を使い分けないと、片伸び値の差が発生しますので、ブランク材の展開作成時や、曲げ作業のバックゲージ寸法の計算時には、使用する金型各部の仕様により片伸び値を使い分けて作業する必要があります。
  パンチ先端R ダイV幅 ダイ肩R ダイ角度
0.2R/1.5R 6/10 、10/14 0.4R/1.5R 30°/88°
SPCC 1.2t V6 0.12mm 0.13mm 0.02mm 0.03mm
1.2 V10 0.12mm 0.03mm 0.05mm
2.0t V10 0.08mm 0.13mm 0.01mm 0.02mm
2.0t V14 0.09mm 0.02mm 0.05mm
SUS 1.2t V6 0.04mm 0.21mm 0.03mm 0.07mm
1.2 V10 0.07mm 0.03mm 0.06mm
2.0t V10 0.02mm 0.21mm 0.03mm 0.06mm
2.0t V14 0.05mm 0.05mm 0.07mm
AL 1.2t V6 0.07mm 0.02mm 0.01mm 0.01mm
1.2 V10 0.09mm 0.00mm 0.01mm
2.0t V10 0.02mm 0.02mm 0.00mm 0.01mm
2.0t V14 0.04mm 0.00mm 0.01mm
【3.機械属性】
片伸び値は、金型取り付け時の芯ずれにも影響されます。
金型取り付け時の芯ずれは、金型そのものの座屈や、機械本体関係の芯ずれによって発生します。
日常の作業においては、金型耐圧、機械本体の耐圧を必ず厳守する事が重要です。
【4.金型高さの検討】
選択した金型を機械にセッティングする場合、ダイホルダーを含めた金型高さの検討が必要になります。
金型高さが高すぎると機械にセッティングできなくなる場合や、セッティングできても刃間距離が短すぎて曲げたワークが手前に抜き取れなくなり、著しく作業性が悪化します。
又、逆に金型高さが低すぎると機械ストロークが不足し、曲げ加工そのものが行えなくなってしまいます。
【5.材料属性】
下記表のように、材料属性は、伸びしろに大きな影響を与えますのでしっかりした管理が必要です。
材料属性
板厚 材料定数
公称板厚と実板厚平均値との差 0~4% 材質の影響 定数変動幅50%
ロット毎の平均板厚の差 ±1.5% メーカー違い 定数変動幅30%
ロット内でのばらつき幅 ±3.5% メーカー内の板厚違い 定数変動幅30%
定尺シート内でのばらつき ±1% ロール目違い 定数変動幅10%
メーカーによる平均板厚 約3%

2016年3月3日

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