技術資料

ステンレス板金加工におけるSUS316について

ステンレスといってもその種類はたくさんあります。もっとも代表的なものにSUS304がありますが、今回はSUS316について説明します。

SUS316とはオーステナイト系ステンレスに分類される鋼種です。

オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS304のニッケル(Ni)含有量を高め、更にモリブデン(Mo)を添加することで、耐食性を上げた鋼種で、特に応力腐食割れや粒界腐食に対して有効です。また、高耐食性ステンレスはC量が低くNi量が多いので、焼鈍状態の硬度が低く、加工硬化が少ないので、絞り用途としても向いています。

なお、固溶化熱処理状態では非磁性ですが、加工により弱い磁性を持つようになります。

ステンレス鋼は、表面に緻密に形成されたCr(クロム)の極薄い酸化皮膜(不動態皮膜)によって錆が内部に進行することを防いでいるため、優れた耐食性を持っています。

その不動態皮膜の厚さは1~3nm(ナノメートル)程度と極めて薄く、また、不動態皮膜は自己修復機能があるため、通常の環境であれば皮膜が破れても鋼中のCrを使って再生することが出来ます。なお、不動態皮膜が形成されるためにはCrは11%以上の含有が必要とされています。

しかしながら、不動態皮膜を持っていても、使用環境(海水、塩水など)によってはその一部が破壊され、局部的に腐食が進行することがあります。

SUS316Lに添加されたMo(モリブデン)には、破壊された不動態皮膜を修復する機能があるため、SUS316LはMoを含有していないSUS304よりも耐食性が良くなるのです。

また、ステンレス鋼に少量含有しているC(炭素)についても、耐食性の影響する場合があります。Cは素地に固溶しているCrと結合しCr炭化物を生成し易く、そのCr炭化物は結晶粒界に析出します。その結果、析出したCr炭化物近傍は低Crとなってしまうため耐食性を低下させ、粒界腐食が発生する原因になります。

SUS316L(L=Low carbon)につきましては、C含有量も低めに調整されています。

※その他、Cr炭化物生成の抑制には、Ti(チタン)やNb(ニオブ)の添加も効果があります。

18Cr-12Ni-2.5Moの組成を持つ材料で、SUS304にモリブデンを加えることで、海水や各種媒質への耐食性を向上させたステンレス鋼材です。耐孔食材料として使われます。海水ポンプ、配管部材、船舶部品、バルブなどに用いられます。

2016年7月4日

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