技術資料

ステンレスの特性2

分類 鋼種 化学成分(%) 熱処理(℃) 機械的性質の代表値(注1) 物理的性質の代表値 特性 材料特性の概要 用途
C Si Mn P S Ni Cr Mo Cu N その他 耐力 (N/mm2) 引張強さ (N/mm2) 伸び (%) 絞り (%) 硬さ 比重 (20℃) 比電気 抵抗 (常温) (μΩ・cm) 熱伝導率 (100℃) (cal/cm・sec・℃) 線膨張係数 (0~100℃) (×10-6)/℃ 弾性 係数 ( ×103 kg/mm2) *1磁性 *2被削率
(HB) (HRB) (HV)
マルテンサイト系 (13Cr系) SUS403 0.15 以下 0.50 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 11.50~ 13.00 焼入れ 焼戻し 950~1000油冷 700~750急冷 390 以上 590 以上 25 以上 55 以上 170 以上 7.75 57 0.059 9.9 20.4 磁性 50 13Cr-低Si、SUS420J1より耐食性を向上し、かつ熱処理後の靭性を改良した耐熱鋼。 バルブ、ポンプシャフト、刃物、蒸気、ダービン翼、ジェットエンジン部品
SUS410 0.15 以下 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 11.50~ 13.50 焼入れ 焼戻し 950~1000油冷 700~750急冷 345 以上 540 以上 25 以上 55 以上 159 以上 7.75 57 0.059 9.9 20.4 磁性 50 SUS420J1より耐食性を向上し、良好な機械加工性を持つ。 機械部品、治工具、金型、刃物類
SUS410J1 0.08~ 0.18 0.60 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 11.50~ 14.00 0.30~ 0.6 焼入れ 焼戻し 970~1020油冷 650~750急冷 490 以上 690 以上 20 以上 60 以上 192 以上 7.75 57 0.059 9.9 20.4 磁性 SUS410より耐食性、抗クリープ性を向上させたもの。 蒸気タービン翼など高温で力のかかる部品
SUS416 0.15 以下 1.00 以下 1.25 以下 0.060 以下 0.15 以上 (2) 12.00~ 14.00 (1) 焼入れ 焼戻し 950~1000油冷 700~750急冷 345 以上 540 以上 17 以上 45 以上 159 以上 7.75 57 0.059 9.9 20.4 磁性 65 S、Pの添加により被削性を向上。SUS420J1に比べ耐食性は劣る。 ボルト、ナット、気化器部品、バルブ
SUS420J1 0.16~ 0.25 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 12.00~ 14.00 焼入れ 焼戻し 920~980油冷 600~750急冷 440 以上 640 以上 20 以上 50 以上 192 以上 7.75 55 0.059 10.3 20.4 磁性 13Cr鋼の基準型。焼き入れ後、高硬度が得られる。 各種シャフト類、刃物、医療機器、プラスチック型、ばね
SUS420J2 0.26~ 0.40 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 12.00~ 14.00 焼入れ 焼戻し 920~980油冷 600~750急冷 540 以上 740 以上 12 以上 40 以上 217 以上 7.75 55 0.059 10.3 20.4 磁性 SUS420J1より炭素量を多くし、焼き入れ後さらに高硬度が得られる。
SUS420F 0.26~ 0.40 1.00 以下 1.25 以下 0.060 以下 0.150 以上 (2) 12.00~ 14.00 (1) 焼入れ 焼戻し 920~980油冷 600~750急冷 540 以上 740 以上 8 以上 35 以上 217 以上 7.75 磁性 SUS420J2にS、Pを添加し、より被削性を向上させた改良鋼種。
SUS431 0.20 以下 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 1.25~ 2.50 15.00~ 17.00 焼入れ 焼戻し 1000~1050油冷 630~700急冷 590 以上 780 以上 15 以上 40 以上 229 以上 7.75 72 0.048 10.2 20.4 磁性 50 Ni添加にて靭性を改良、Cr添加にて耐食性を向上させたもの。耐食性はSUS410、430より優れる。 製紙機械、船舶用シャフト、航空機部品
SUS440A 0.60~ 0.75 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 16.00~ 18.00 (3) 焼入れ 焼戻し 1010~1070油冷 100~180空冷 54 以上 7.70 60 0.058 10.2 20.4 磁性 40 焼き入れ後の硬度が高く、耐食性と耐摩耗性を兼備する。硬度ではSUS440Cがステンレス鋼中最高硬度となり、硬度順はSUS440C>440B>440A、耐摩耗性および靭性はSUS440A>440B>440Cの順となる。 刃物、軸受け、ゲージ類、ベアリング、ポンプ部品、ノズル、金型
SUS440B 0.75~ 0.95 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 16.00~18.00 (3) 焼入れ 焼戻し 1010~1070油冷 100~180空冷 56 以上 7.70 60 0.058 10.2 20.4 磁性
SUS440C 0.95~ 1.20 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 (2) 16.00~ 18.00 (3) 焼入れ 焼戻し 1010~1070油冷 100~180空冷 58 以上 7.70 60 0.058 10.2 20.4 磁性
SUS440F 0.95~ 1.20 1.00 以下 1.25 以下 0.060 以下 0.150 以上 (2) 16.00~ 18.00 (3) 焼入れ 焼戻し 1010~1070油冷 100~180空冷 58 以上 7.70 磁性 SUS440Cの被削性を改良したもの。
析出硬化系 (17Cr系) SUS630 0.07 以下 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 3.00~ 5.00 15.00~17.50 3.00~ 5.00 Nb0.15 ~0.45 固溶化 熱処理 S1020~1060 急冷 363 以下 38 以下 7.93 80 0.044 10.8 20.0 磁性 Cuの添加で析出硬化を持たせたもの。SUS304の2倍の強度、耐食性も同等。 シャフト、タービン部品、スチールベルト
析出 硬化熱 処理 H900 S処理後 470~490空冷 1175 以上 1310 以上 10 以上 40 以上 375 以上 40 以上
H1025 S処理後 540~560空冷 1000 以上 1070 以上 12 以上 45 以上 331 以上 35 以上
H1075 S処理後 570~590空冷 860 以上 1000 以上 13 以上 45 以上 302 以上 31 以上
H1150 S処理後 610~630空冷 725 以上 930 以上 16 以上 50 以上 277 以上 28 以上
SUS631 0.09 以下 1.00 以下 1.00 以下 0.040 以下 0.030 以下 6.50~ 7.75 16.00~ 18.00 Al0.75 ~1.5 固溶化 熱処理 S1000~1100 急冷 380 以下 1030 以下 20 以上 229 以下 7.93 83 0.039 11 20.0 磁性 SUS301にAlを添加し析出硬化により弾性限を高めたもの。 スプリング、ワッシャー、計器部品、他腐食環境でばね特性が要求される部品。
析出 硬化熱 処理 TH1050 S処理後760±15℃に90分保持、1時間以内に15℃以下に冷却、30分保持、565±10℃に90分保持後空冷。 960 以上 1140 以上 5 以上 25 以上 363 以上
RH950 S処理後955±10℃に10分保持、室温まで空冷、24時間以内に-73±6℃に8時間保持、510±10℃に60分保持後空冷。 1030 以上 1230 以上 4 以上 10 以上 388 以上
  • (1)Moは0.60%以下添加することができる。
  • (2)Niは0.60%以下含有しても差し支えない。
  • (3)Moは0.75以下添加することができる。
  • (注1)ステンレス棒鋼JISG4303規格値を掲載。(板材他については一部規格なし、または、値が異なる場合があります。)
  • *被削率はAlSl B 1112の切削速度を100として他の材料を比率で示したもの。(0.08%炭素鋼55、0.22%炭素鋼70、0.35%炭素鋼60、0.50%炭素鋼55、0.80%炭素鋼45)
分類 鋼種 磁性 焼入れ硬化性 加工硬化性 耐食耐候性 衝撃と伸び 溶接性 耐低温性 方向性 熱伝導 熱膨張
オーステナイト系 (18-8系) SUS304 SUS316 非磁性 焼入れ硬化性なし 加工硬化性大、ニッケル含有量の多い鋼種は加工硬化が少ない 優れた特性を有している きわめて良好、成形性に富む 溶接性は最も良好、ただの溶接の際、500~800℃の温度範囲に加熱すると耐食性が劣化する -20℃まで靭性が低下しない 方向性はほとんどない 軟鋼の約3分の1 軟鋼の約1.5倍
フェライト系 (18Cr系) SUS430 磁性 焼入れ硬化性なし 冷間加工で多少の硬化が認められる 内装用としては腐食の心配はないが屋外の使用には問題がある オーステナイト系に比べて劣る 溶接性はやや劣る、高温に加熱すると、熱影響部の結晶粒が粗大化してぜい化する -10℃以下ではもろい 方向性あり、圧延の目に直角に曲げるようにする 軟鋼の約2分の1 軟鋼とほぼ同じ
マルテンサイト系 (13Cr系) SUS410 磁性 焼入れ硬化性あり、炭素含有量の多いものは冷却後に割れやすい 軟鋼と同じ傾向の加工軟化性を示す 劣る オーステナイト系に比べて劣る 溶接性はよくない、余熱・後熱処理をしないと溶接割れを生じる -10℃以下ではもろい 方向性あり 軟鋼の約2分の1 軟鋼とほぼ同じ
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