技術資料

ステンレス鋼の種類と特性

一概にステンレスと言っても、様々な種類と特性があります。 

 

■オーステナイト系
鋼種 磁性(分類) 材料特性 用途
SUS201 非磁性(18Cr-8Ni) Ni節鋼種。SUS301の代替鋼。磁性有り。
SUS301、302と比較して耐酸性は若干劣るが、耐粒界腐食性は同等で機械的性質は改良されている
ぱね、機械構造用、化学、食品、刃物
SUS202 非磁性(18Cr-8Ni) 料理器具、厨房品、自動車問機器
SUS301 非磁性(18Cr-8Ni) SUS304より加工硬化性が大きい ぱね、機械構造用、鉄道車両
SUS302 非磁性(18Cr-8Ni) 冷間加工によって高い引張強さを得る 一般用、建築外装、化学、食品、刃物
SUS303 非磁性(18Cr-8Ni) S.Pの添加で被削性を改良。耐焼付性向上 機織部品、治工具、シャフト、ボルト、ナット
SUS304 非磁性(18Cr-8Ni) 18Cr-8Niの代表鋼種。耐食性、溶援性が良好 化学工業・食品位備・半導体製造設備
SUS305 非磁性(18Cr-8Ni) Ni量を噌し、SUS3041こ比べ加工硬化性を減少 ヘラ絞り、線引用、冷間鍛造部品、ネジ
SUS309S 非磁性(18Cr-8Ni) SUS304に比べ耐黙性・耐食性良好。高温強度用 熱交換機、排気装置、ジェットエンジン部品
SUS310S 非磁性(18Cr-8Ni) SUS309に比べ耐酸化性、耐熱性が良好 耐熱用途、硝酸プラント
SUS316 非磁性(18Cr-8Ni) SUS304より耐食性、耐酸性が良好、高温強度大 石油化学工業、食品工業、半導体製造装置
SUS317 非磁性(18Cr-8Ni) SUS316よりMo量を高め、耐酸性を改良 ケミカルタンカ一、耐酸性を要する化学設備
SUS321 非磁性(18Cr-8Ni) Tiを添加し、耐粒界腐食性を高めたもの 熱交換機、蒸発器
SUS347 非磁性(18Cr-8Ni) Nbを添加し、耐粒界腐食性を高めたもの 石油精製プラント、加熱炉管
SUS329J1 磁性(25Cr-5Ni) 耐食性・耐応力腐食性。塩化物溶液中で特性あり 船舶部品、海水熱交換器海水ポンプ部品
■フェライト系その他
分類 鋼種 磁性(分類) 材料特性 用途





SUS405 磁性(18Cr) 13Cr鋼程度の耐食性を有し、Al添加で自硬性軽減 タービン材、焼入用部品、クラッド材
SUS410L 磁性(18Cr) SUS410S低炭素鋼。耐高温酸化性に優れる 自動車マフラー、ボイラー燃焼室
SUS430 磁性(18Cr) 18Crの代表鋼種。冷問加工性・耐食性が良好 建築内装材、厨房器具、一般家庭用器具
SUS434 磁性(18Cr) SUS4301こMoを添加し耐塩分の耐食性を向上 建築材料、厨房器具、自動車外装用







SUS403 磁性(13Cr) 420Jlより耐食性を向上。熱処理後の靭性を改良 パルプ、刃物、蒸気・タービン翼
SUS410 磁性(13Cr) 420Jlより耐食性を向上。良好な機械加工性を持つ 機械部品、治工具、金型、刃物類
SUS416 磁性(13Cr) S.Pの添加により被削性向上 ボルト、ナット、気化器部品、バルブ
SUS420J1 磁性(13Cr) 13Cr鋼の基準型。焼入れ後、高硬度が得られる シャフト類、医療機器、プラスチック型
SUS440A 磁性(13Cr) 焼入れ後の硬度が高〈耐食性と耐摩耗性を兼備 刃物、軸受け、ベアリング、金型
析出
硬化系
SUS630 磁性(17Cr) Cuの添加で析出硬化させたもの。304の2倍の強度 シャフト・タービン部品、スチールベルト
SUS631 磁性(17Cr) 301にAlを添加し、析出硬化させ弾性限を高めた スプリング、ワッシャ一、ばね性の部品
ステンレス鋼板
鉄を主体として、Crのみ、もしくはCrとNiが10%以上添加されたものをステンレス鋼と呼んでいます。
ステンレス鋼は耐食性に優れており、メッキや塗装のなどの後処理の必要がない。製鋼工程から最終工程まで厳重な品質管理ができ、材料の内部応力は均一、平坦度も極めて良好のため、高精度加工に向いた材料である。
しかし、鋼材と比較するとタップ立て、溶接などの加工は劣る。
一般のプレス板金業では、SUS304、316、430材が主に使われている。
Cr(クローム):摩耗に強く、鉄を錆びにくくする。
Ni(ニッケル):粘り強さを増し、特に低温で衝撃にたえる。
鋼種は200番系、300番系等の呼び方で表される。
結晶組織の分類はオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、折出硬化系がある。
オーステナイト系のステンレス鋼は、本質的には磁性を帯びない。
しかし、曲げたり絞ったりすると、その部分だけ磁性体となり、磁性を帯びることがあるので、注意を要する。
例えば、ソレノイドのブラケットのように磁性を嫌う場合は、曲げや絞り加工後に焼きなまし処理をすると非磁性にもどる。
【1.SUS200番系(201、202)】
組織 Cr(16~18%)、Ni(3.5~5.5%) 例SUS201
Mn(5.5~7.5%)
特性 Niを節約しMnを添加したために加工性が良好。
耐食性は304に比べ落ちる。
引張り強さ 65kg/mm2以上(SUS201)
オーステナイト系組織、非磁性。
用途 鉄道車両部品、自動車トリム、ホイルカバー、食器類等。
【2.SUS300番系(301,302,303,304,305, 309)】
組織 Cr(16~18%)、Ni(10~14%) 例SUS316
Mn(2%以下)
特性 Mo、またはMoとCuを添加したために、腐食性、非酸化性に優れている。海水や各種媒体に304より優れた耐水性がある。
引張り強さ 53kg/mm2以上(SUS316)
オーステナイト系組織、非磁性。
用途 石油精製工業、染色関係、繊維関係、海洋事業等。
※その他
[SUS327、SUS347]
Ti(チタニウム)等の含有で、特殊ステンレス材とされ航空機等に利用される。
【4.SUS400番系(403,405,410,430,434)】
組織 Cr(16~18%)、Ni(0.6%以下は可) 例SUS430
Mu(1%以下)
特性 304と比べると多少安価。耐食性は304よりやや劣るが室内なら錆びないので広範囲の業種で活用されている。
じん性力(ねばり)があるため加工しやすい。
引張り強さ 45、46kg/mm2以上(SUS403、430)
フェライト系組織、磁性。    405,430,434
マルテンサイト系組織、磁性。403,410,420J2,440B
430は市場では「18クロム・ステンレス鋼」と呼ばれる。
用途 一般家庭用器具、家電部品、機械構造用、厨房機器等。
【5.SUS600番系(630,631)】
組織 Cr(16~18%)、Ni(6.5~7.75%) 例SUS631
Mn(1%以下)、Al(0.75~1.5%)
特性 アルミの添加で折出硬化性をもたせたバネ用鋼材。
引張り強さ 116kg/mm2以上(SUS631)
折出硬化系組織、磁性。
用途 スプリング、ワッシャ、計器部品等。
ステンレス鋼板の仕上げ区分
鋼種とは別に、用途に応じた表面の仕上げ状態により下記のような区分があります。
No.2D 冷間圧延後、熱処理、酸洗い処理したもの。
また、つや消しロールによって最後に軽く冷間圧延処理したものを含む。
No.2B
(ツービー)
冷間圧延後、熱処理、酸洗い処理したのち適当な光沢をあたえるため軽く冷間圧延したもので一般用材、建材など市販品の大部分を占める。
BA
(ビーエー)
冷間圧延後、光輝熱処理を行い、さらに光沢を上げるため、軽く冷間圧延したもので鏡面に近い光沢を持ち、自動車用部品、家電製品、厨房用品に使われます。
No.4 No.2Bを150番の砥粒の研磨ベルトで研磨したもので、光沢のある細かい目があり建材厨房用品、医療機器に使われます。
市場では400#と呼ばれている。
HL
(ヘアーライン)
240番程度の砥粒の研磨ベルトで髪の毛のように長く連続した研磨目を付けたもので建材の最も一般的な仕上げの1つです。
No.8 順々に細かい粒度の研磨材で研磨した後、鏡面用バフにより研磨したものです。
最も反射率の高い鏡面仕上げで装飾用建材、反射鏡などに使われます。
市場では800#、鏡面とよばれている。
エッチング 縞模様の仕上げのこと。

2016年1月27日

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